管工事と水道工事は、地面の下にある設備を扱う仕事です。目に見えないぶん、その老朽化も見えにくく、更新の必要性は統計によってしか把握できません。そして統計を見ると、更新すべき量と、実際に更新できている量のあいだに、大きな開きがあることが分かります。本稿では公表資料から業界の現在地を整理します。
管工事・水道工事業の現在地|許可業者数から見る
国土交通省「建設業許可業者数調査」(令和8年3月末現在)によれば、関連する許可業種の業者数は次のとおりです。
| 許可業種 | 業者数 | 前年比 | 平成12年3月末比 |
|---|---|---|---|
| 管工事業 | 91,168 | 0.8%増 | 3.0%増 |
| 水道施設工事業 | 88,518 | 0.1%減 | 9.8%増 |
| 土木工事業 | 130,833 | 0.8%減 | 22.1%減 |
| さく井工事業 | 2,216 | 1.5%減 | 35.1%減 |
出典:国土交通省「建設業許可業者数調査」(令和8年3月末現在)より作成
管工事業・水道施設工事業ともに、長期的にはほぼ横ばいから微増で推移しています。同じ期間に土木工事業が22.1%減、建築工事業が37.8%減となっていることを踏まえると、比較的安定した業種と言えます。
ただし、担い手の状況は建設業全体と同じです。総務省「労働力調査」に基づく日本建設業連合会の集計では、2025年の建設業就業者数は478万人でピークの1997年(685万人)の約7割、建設技能者は296万人で同6割強、就業者のうち55歳以上が約37%、29歳以下が約12%とされています。
需要の構造|管路の経年化率25.4%、更新率0.61%
需要の見通しは、水道インフラの数字がはっきり示しています。総務省自治財政局「水道事業の現状等」(令和7年7月)によれば、令和5年度の管路経年化率(法定耐用年数を経過した管路延長の割合)は全国平均で25.4%、管路更新率は0.61%です。
この二つの数字を並べると、問題の構造が見えます。全体の4分の1が法定耐用年数を超えているのに、1年間に更新できているのは0.6%程度。単純計算すれば、すべてを入れ替えるのに150年以上かかる計算になります。都道府県別では、経年化率が最も高いのは大阪府の36.3%、次いで香川県の31.6%です。更新率は東京都と神奈川県が1.1%と高く、長野県が0.3%と低い水準にあります。
国土交通省のインフラメンテナンス情報によれば、総延長約74万kmの水道管路のうち、建設後50年以上を経過するものの割合は2030年3月に約21%、2040年3月には約41%に達する見込みです。下水道管渠(総延長約49万km)は約16%から約34%へと推移します。
投資の側も動いています。総務省の同資料によれば、水道事業の建設改良費のうち「新増設」に係る費用は直近20年間で39%減少(平成15年0.6兆円→令和5年0.4兆円)した一方、既存施設の「改良」に係る費用は100%増加(同0.5兆円→1兆円)しています。新しくつくる仕事から、直す仕事へ、はっきりと重心が移ったということです。
また、政府が令和7年6月6日に閣議決定した「第1次国土強靱化実施中期計画」では、大口径の下水道管(約5,000km)について健全度の確保を2032年度までに100%とする目標が掲げられています。
制度の動き|2024年4月の水道行政移管
制度面では、2024年4月1日に水道行政が厚生労働省から国土交通省および環境省へ移管されました。水質・衛生に関する事務を環境省が、それ以外の施設整備・管理に関する事務を国土交通省が担う体制です。これは、下水道を所管してきた国土交通省のもとに水道の整備・管理を一元化するもので、約67年ぶりの大きな機構改革とされています。
実務への影響として期待されているのは、上下水道を一体で捉えた整備・更新の計画づくりと、災害時の対応強化です。事業者から見れば、発注する側の体制が変わったということであり、上下水道を一体で受注できる体制を持つことの意味が増した、と読むこともできます。
指定給水装置工事事業者制度|5年ごとの更新制
水道工事、とくに給水装置工事を行うには、水道事業者(市町村等)から指定給水装置工事事業者の指定を受ける必要があります。この制度は、2019年10月1日に施行された改正水道法により、それまで有効期間の定めがなかった指定が5年ごとの更新制に改められました。
更新制の導入は、実質的な要件の再確認を意味します。給水装置工事主任技術者の選任、事業所の体制、法令遵守の状況などが、5年ごとに確認されることになりました。改正の趣旨は、指定事業者の資質を維持・向上させることにあるとされています。
実務上の注意点は、指定が水道事業者(市町村等)ごとに与えられるということです。複数の市町村で工事を行う会社は、それぞれの指定を受けており、更新時期もばらばらになります。承継にあたっては、指定の一覧と更新時期の把握が必要です。
指定の要件、更新手続、届出事項は水道事業者によって運用が異なる場合があります。個別の判断にあたっては、所管の水道事業者および専門家にご確認ください。
事業承継の観点で何が論点になるか
管工事・水道工事会社の承継では、次の点が焦点になります。
第一に、指定と有資格者です。指定給水装置工事事業者の指定は、給水装置工事主任技術者の選任を前提としています。この資格者が経営者様ご本人だけである場合、退任がそのまま指定の維持に影響します。あわせて、建設業許可の専任技術者(管工事施工管理技士等)の要件を誰が満たすのかも確認が必要です。
第二に、発注機関との関係です。水道事業者からの発注は、入札参加資格と過去の履行実績に基づきます。緊急時の修繕対応を担う当番制(待機工事)に参加している会社は、地域のインフラを支える役割を担っており、それ自体が事業の価値になります。
第三に、承継後も同じ体制で工事を続けられるかです。埋設管の工事は、道路占用や掘削の許可、近隣対応、交通誘導の手配など、地域ごとの実務の積み重ねが求められます。この「地元でやってきた実績」は、書類には表れにくい資産です。
そして後継者です。帝国データバンクの2025年調査では国内企業の後継者不在率は50.1%とされています。更新需要は今後20年以上続くことが統計から見通せる分野ですが、それを担う会社が残らなければ意味がありません。
M&Aで引き継ぐときに整理しておきたいこと
一般に、次のような情報が確認されます。
- 建設業許可(管工事業・水道施設工事業など)の有効期限と、専任技術者の氏名・年齢
- 指定給水装置工事事業者の指定を受けている水道事業者の一覧と、それぞれの更新時期
- 給水装置工事主任技術者、管工事施工管理技士などの有資格者一覧
- 経営事項審査の評点推移と、入札参加資格を持つ発注機関
- 売上の内訳(公共/民間、新設/更新/修繕、上水/下水/建築設備)
- 緊急修繕の当番制・待機工事への参加状況と、その収益への寄与
- 保有機械・車両(バックホウ、ダンプ、高圧洗浄車等)の一覧と更新予定
- 労働時間管理・社会保険の加入状況、夜間・緊急対応の労務実態
指定の一覧と有資格者の一覧、この二つが揃っているだけで、話は格段に進めやすくなります。地面の下の仕事は、記録が残っている会社ほど信頼されます。
当社は成功報酬型のもと、管工事・水道工事業を含む中小企業の事業承継・会社売却をご支援しています。守秘義務を徹底のうえ、初期の整理から対応いたします。
設備工事全体の動きは「設備工事業界の動向|技術者資格と施工体制の維持」、道路側の動きは「道路・舗装工事業界の動向|インフラ老朽化と維持管理需要」でも整理しています。費用の考え方は料金体系のページに公開しています。
本稿の記述は執筆時点(2026年9月)の公表資料に基づきます。最新の情報は各所管官庁の公表をご確認ください。