エス・エム・エスは2026年10月21日開催の取締役会において、同社が営むデータヘルス事業を会社分割(簡易吸収分割)の方法によりメドケア株式会社に承継させることを決議し、同日付で吸収分割契約を締結したと公表しました。対象事業は、健康保険組合・全国健康保険協会・地方公共団体等に対し、ICTを活用した遠隔での特定保健指導等を提供する事業とされています。
開示された事実
| 譲受(買い手) | メドケア株式会社(エムスリー株式会社の完全子会社) |
|---|---|
| 譲渡(売り手) | 株式会社エス・エム・エス |
| 譲渡対象 | データヘルス事業(特定保健指導等)(健康保険組合・全国健康保険協会・地方公共団体等に対し、ICTを活用した遠隔での特定保健指導等を提供する事業) |
| 所在地 | 東京都港区芝公園(分割会社の所在地) |
| 手法 | 吸収分割(簡易分割)。売り手を分割会社、承継会社を買い手とする吸収分割により、対象事業に属する資産、負債、契約上の地位およびこれらに付随する権利義務ならびに従業員との雇用契約を承継する。売り手においては会社法第784条第2項に定める簡易分割に該当するため株主総会の承認を得ずに行うと記載されている |
| 対価 | 対価は金銭1円。承継会社が分割会社に対して金銭1円を交付し、株式その他の財産の交付はない。開示資料は、対象事業の収益の状況及び将来の見通しを基とした事業価値算定に加え、承継後に承継会社が負担することとなる事業運営上の費用及び責任、対象事業に係る契約関係の承継に要する対応等を総合的に勘案し、独立した第三者である承継会社との協議・交渉を重ねた結果として合意したと記載している |
| 日程 | 2026年10月21日 吸収分割契約承認取締役会決議日/2026年10月21日 吸収分割契約締結日/2026年12月1日(予定) 分割期日(効力発生日) |
承継会社が分割会社に対して交付するのは金銭1円で、株式その他の財産の交付はないと記載されています。開示資料は、対価について対象事業の収益の状況及び将来の見通しを基とした事業価値算定に加え、承継後に承継会社が負担することとなる事業運営上の費用及び責任、対象事業に係る契約関係の承継に要する対応等を総合的に勘案し、協議・交渉を重ねた結果として合意したと記載しています(出典:株式会社エス・エム・エス 2026年10月21日公表資料)
分割する部門の売上高は590百万円で、分割会社の連結売上高64,735百万円に対する割合は0.9%と記載されています。分割する資産は流動資産46百万円・固定資産17百万円、負債は流動負債6百万円・固定負債0百万円とされています(出典:株式会社エス・エム・エス 2026年10月21日公表資料)
承継会社は東京都豊島区目白に所在し、オンライン診療・特定保健指導・禁煙外来等のサービス提供を事業内容としています。資本金は10百万円、設立は2015年4月2日、発行済株式数は652,000株で、大株主及び持株比率はエムスリー株式会社100%と記載されています。直前事業年度は純資産が146百万円の負、総資産が107百万円で、経営成績及び財務状況の詳細は相手先との守秘義務の関係で省略するとされています(出典:株式会社エス・エム・エス 2026年10月21日公表資料)
開示資料は目的について、注力領域への経営資源の集中を進めるべく事業ポートフォリオの見直しを行ってきたとし、対象事業を今後も安定的に継続し利用者・委託元に対するサービス提供責任を果たしていくためには、同種のオンライン医療・保健指導サービスの基盤を有し事業の継続的な運営体制を確保できる承継会社に承継させることが最適であるとの判断に至ったと記載しています。
本件は、分割会社の総資産の減少額が直前事業年度の末日における純資産額の10%未満であり、かつ売上高の減少額が直前事業年度の売上高の3%未満であると見込まれる会社分割であるため、開示事項・内容を一部省略して開示しているとされています。効力発生日後において、分割会社および承継会社が負担すべき債務の履行の見込みに問題はないと判断したと記載されています(出典:株式会社エス・エム・エス 2026年10月21日公表資料)
出典: 株式会社エス・エム・エス「会社分割(簡易吸収分割)によるデータヘルス事業のメドケア株式会社への承継に関するお知らせ」(2026年10月21日公表)・適時開示
中小企業の経営者は、どう読むか
事業を渡す対価が、名目だけの額になることがあります。
受け取る側が、同時に費用と責任を引き受けるからです。
この開示も、承継後に承継会社が負う運営費用と責任を勘案したと書いています。
対価の額だけを見ると、事業に値段が付かなかったように読めます。
実際には、引き受ける負担を差し引いた結果です。
従業員との雇用契約も、契約の定めに従って移ります。
渡す側は、続けられない事業を誰に託すかを選んでいます。
中小企業でも、採算の合わない部門だけを譲ることがあります。
そのときは、価格よりも引受けの条件を先に詰めます。