学校教育ICTを手がけるチエルは2024年10月28日、株式会社オキジムの株式取得の協議を開始することを決議し、同社の大株主である個人との間で基本合意書を締結したと公表しました。決定ではなく、協議の開始です。
開示された事実
| 譲受(買い手) | チエル株式会社(3933・東証スタンダード) |
|---|---|
| 譲渡対象 | 株式会社オキジム(OA機器・複合機・事務用機械器具・事務用品の販売および賃貸、ITソリューション) |
| 所在地 | 沖縄県浦添市 |
| 手法 | 株式譲渡(大株主との間で基本合意書を締結。取得株式数・取得価額・日程はいずれも未決定) |
| 対価 | 未決定(開示資料に「現時点では決定していない。株式取得価額およびその妥当性は両者間の交渉の過程において適切なデューデリジェンスを行う」と記載) |
| 日程 | 取締役会決議・基本合意書締結 2024年10月28日(以降の日程は未決定) |
開示資料によれば、取得株式数・取得価額・日程はいずれも現時点では決定しておらず、取得価額とその妥当性は両者間の交渉の過程で適切なデューデリジェンスを行うとしています。対象会社は1980年9月設立、資本金43,050千円で、純資産は直近3期で1,271百万円、1,350百万円、1,465百万円、売上高は5,761百万円、4,844百万円、5,085百万円です(出典:チエル株式会社 2024年10月28日公表資料)。
対象会社は沖縄県で合資会社として設立後およそ70年を数える県内業界トップクラスの事務機器販売・ITソリューション事業者で、官公庁・大手企業など約5,000社前後に販路を構築し、学校教育ソフトやタブレット・電子黒板などの販売を含めた学校市場でも県内有数のシェアとネットワークを有していると記載されています。最近は医療介護施設への営業にも注力しているとしています(出典:チエル株式会社 2024年10月28日公表資料)。
取得の理由として同社は、国の施策として展開される教育ICTの整備を中心に、自社の教育ICT製品を対象会社の販売ネットワークで展開できる可能性、既に沖縄県内にあり対象会社と取引関係のあるグループ子会社2社との相乗効果、自社が手がけるeラーニングを沖縄県を中心とする医療介護施設向けに拡大できる可能性を挙げています。
中小企業の経営者は、どう読むか
基本合意の時点で、株式数も価格も日程も決まっていません。決まっているのは「この相手と本格的に話を進める」ことだけです。基本合意は条件を固める書面ではないということが、はっきり出ている例です。
買い手が評価したのは、その県の中に築かれた販路でした。約五千社という取引先の数と、学校市場でのつながりです。県外の会社がその地域で一から売り先を作るのは難しいので、地域の販路は買えない資産として扱われます。
売上は年によって上下し、直近も以前の水準には戻っていません。それでも協議が始まっています。買い手が見ているのは売上の伸びではなく、そこに誰との関係があるかです。
会社の設立は登記上は四十年ほど前ですが、合資会社としての創業は七十年前と書かれています。組織の形を変えながら続いてきた会社です。登記上の設立日だけでは事業の歴史は分かりません。譲渡の資料では、事業としての歩みを分けて示すほうが伝わります。
買い手のグループには、すでに同じ県内で対象会社と取引のある子会社が二社ありました。取引を通じて相手を知っている状態から協議に入っています。地域で商売をしていれば、買い手側の子会社が既に取引先である場合もあります。