M&Aの検討を始めた経営者様が最初に戸惑うのが、「ノンネーム」「IM」「レーマン方式」といった専門用語の多さです。仲介会社との面談や提案書、契約書には、こうした言葉が当たり前のように登場します。本稿では、経営者様がまず押さえておきたい30語を、検討段階から成約後まで6つの場面に分けて、それぞれ2〜3文で平易にご説明します。最初から通読していただく必要はありません。わからない言葉に出会ったとき、辞書代わりに引いていただければ十分です。より詳しい解説記事がある用語には「詳しくは→」のリンクを付けていますので、あわせてご活用ください。サイト全体の用語を場面ごとに引けるM&A用語集(96語)もご用意しています。
検討段階の用語|M&A・事業承継・イグジットほか
1. M&A(エムアンドエー)
Mergers and Acquisitions(合併と買収)の略で、会社や事業の経営権を移転させる取引の総称です。中小企業では、後継者不在の解決策や成長戦略として株式譲渡による会社売却が広く使われています。全体の流れは「詳しくは→M&Aの流れ」をご覧ください。
2. 事業承継
会社の経営を次の担い手に引き継ぐことです。親族への承継、役員・従業員への承継、そして第三者への承継(M&A)の3つの方法があります。後継者が見つからない場合の有力な選択肢がM&Aです。
3. イグジット
創業者や株主が保有株式を現金化する「出口」戦略のことです。代表的な手段はIPO(株式上場)とM&A(会社売却)の二つで、目的や時間軸によって使い分けます。売り時の考え方は「詳しくは→会社売却のタイミング」も参考になります。
4. 株式譲渡
会社の株式を買い手に譲り渡し、会社を丸ごと引き継いでもらう手法です。会社の法人格はそのまま維持されるため、契約や許認可、従業員の雇用を原則そのまま承継でき、中小企業のM&Aで最も多く使われます。詳しくは→株式譲渡と事業譲渡の違い
5. 事業譲渡
会社そのものではなく、特定の事業に関する資産・負債・契約などを個別に譲り渡す手法です。譲る範囲を選べる反面、契約や従業員の移転に個別の同意が必要になります。事業の切り分けには会社分割という手法もあります(詳しくは→会社分割とは)。
相手探しの用語|ノンネーム・NDA・IMほか
6. ロングリスト
買い手候補となり得る企業を幅広くリストアップした一覧表です。ここから条件で絞り込んだものをショートリストと呼び、実際に打診する相手を選んでいきます。
7. ノンネーム(ノンネームシート)
会社名を伏せたまま、業種・地域・規模などの概要をまとめた匿名の紹介資料です。買い手候補への最初の打診に使い、社名が特定されないよう情報の粒度を調整します。詳しくは→ノンネームとIMの役割
8. NDA(秘密保持契約)
知り得た情報を第三者に漏らさないことを約束する契約です。買い手候補に社名や詳細情報を開示する前に必ず締結します。M&Aでは情報漏えいが破談の最大の原因のひとつとされており、要となる契約です。詳しくは→秘密保持がM&Aの生命線である理由
9. ネームクリア
ノンネームでの打診に関心を示した買い手候補に対し、売り手の了承を得たうえで社名を開示することです。どの相手に社名を明かすかを売り手がコントロールできる仕組みです。
10. IM(企業概要書)
NDA締結後の買い手候補に開示する、会社の詳細な説明資料です。事業内容、財務情報、組織、強みなどをまとめ、買い手はこれをもとに検討を深めます。Information Memorandumの略です。詳しくは→ノンネームとIMの役割
価格の用語|EBITDA・のれん・DCFほか
11. バリュエーション(企業価値評価)
会社の価値を金額として見積もる作業です。時価純資産に着目する方法、収益力に着目する方法、類似企業と比較する方法などがあり、複数の方法を組み合わせて価格の目線をつくります。詳しくは→企業価値評価の3つの方法。当社の企業価値算定シミュレーターでは目安の試算も可能です。
12. 時価純資産
資産と負債を時価で評価し直したうえでの純資産額です。帳簿上の純資産に、不動産の含み損益や退職給付債務などを反映して算出します。中小企業のM&Aでは価格目線の土台としてよく使われます。詳しくは→時価純資産法とは
13. EBITDA(イービットディーエー)
営業利益に減価償却費を足し戻した、事業が生み出すおおまかなキャッシュフローを示す指標です。設備投資の多寡による差をならして収益力を比較でき、M&Aの価格談義で頻繁に登場します。詳しくは→EBITDAとは
14. マルチプル(倍率法)
EBITDAなどの指標に一定の倍率を掛けて企業価値を見積もる評価方法です。類似する上場企業や取引事例の水準を参考に倍率を決めます。簡便で相場観をつかみやすい反面、自社固有の事情は別途考慮が必要です。詳しくは→マルチプル法とは。売却相場の考え方は会社売却の相場もご参照ください。
15. DCF法
将来のキャッシュフロー計画を現在価値に割り引いて企業価値を算出する評価方法です。将来性を織り込める理論的な手法ですが、事業計画の前提に結果が大きく左右されます。詳しくは→DCF法とは
16. のれん
譲渡価格のうち、時価純資産を上回る部分のことです。ブランド力、顧客基盤、技術、人材といった、貸借対照表に載らない見えない価値への評価を意味します。詳しくは→のれんとは
契約の用語|基本合意・DD・表明保証ほか
17. LOI・基本合意(基本合意書)
買い手候補との間で、価格や条件の大枠、今後の進め方をその時点で確認する中間的な合意です。価格などの主要条件には法的拘束力を持たせず、独占交渉権や秘密保持には拘束力を持たせるのが一般的です。詳しくは→基本合意書(LOI)と最終契約書(SPA)
18. DD(デューデリジェンス)
基本合意後に買い手が行う、対象会社の詳細調査です。財務・税務・法務・労務・事業などの観点から専門家が調べ、価格や契約条件に反映させます。売り手には誠実な資料開示と説明が求められます。詳しくは→デューデリジェンスとは
19. SPA・最終契約(株式譲渡契約書)
デューデリジェンスの結果を踏まえて締結する、法的拘束力のある最終的な契約です。譲渡価格、支払方法、表明保証、クロージングの条件などが詳細に定められます。詳しくは→LOIとSPAの違い
20. 表明保証
開示した情報が真実かつ正確であることを、売り手が契約書上で表明し保証する条項です。成約後に簿外債務などが発覚した場合、違反として損害賠償の対象になり得るため、正直な開示が何よりの防御になります。詳しくは→表明保証とは
21. アーンアウト
譲渡対価の一部を、成約後の業績達成に応じて後払いする条件です。売り手と買い手の価格目線に開きがあるときの橋渡しとして使われます。詳しくは→アーンアウト条項とは
22. クロージング
最終契約に基づいて株式の譲渡と対価の支払いを実行する、M&Aの完了手続きです。この日をもって経営権が正式に移転します。詳しくは→クロージングとは
手数料の用語|レーマン方式・中間金・テール条項ほか
23. レーマン方式
取引金額を金額帯ごとに区切り、大きい部分ほど低い料率を掛けて成功報酬を計算する方式です。一般的な料率は5億円以下の部分5%、5〜10億円4%、10〜50億円3%、50〜100億円2%、100億円超1%とされています。料率を掛ける基準額が「株価ベース」か「移動総資産ベース」かで金額が大きく変わる点に注意が必要です。詳しくは→仲介手数料の相場とレーマン方式
24. 着手金
仲介契約の締結時に支払う費用です。成約に至らなくても返金されないのが一般的です。着手金を設けない仲介会社も多く、手数料比較の重要なポイントになります。
25. 中間金
基本合意の締結時など、プロセスの中間段階で支払う費用です。成功報酬の一部前払いとして設定されることが多く、基本合意後に破談となっても返金されない契約が一般的です。詳しくは→中間金とは
26. 成功報酬
M&Aが成約(クロージング)した時点で初めて発生する報酬です。着手金や月額報酬を設けず成功報酬を中心とする体系は「成功報酬型」と呼ばれます。当社の料金体系は料金体系のページでご確認いただけます。
27. テール条項
仲介契約の終了後一定期間内に、紹介を受けた相手と成約した場合には手数料が発生するという条項です。契約を解除しても直ちに手数料義務が消えるわけではないため、期間と範囲の確認が大切です。詳しくは→テール条項とは
28. 専任条項
特定の仲介会社1社だけに依頼し、他社への並行依頼をしないことを定める条項です。情報管理を徹底しやすい利点がある一方、依頼先を固定する重い約束でもあるため、中小M&Aガイドラインでも契約前の十分な説明が求められています。
成約後の用語|PMI・ロックアップ・経営者保証
29. PMI(ピーエムアイ)
Post Merger Integrationの略で、成約後に売り手と買い手の組織・業務・文化を統合していく取り組みです。M&Aの成否は成約後の統合にかかっているといわれるほど重要な工程です。詳しくは→PMIとは
30. ロックアップ(キーマン条項)/経営者保証
ロックアップ(キーマン条項)は、譲渡後も前オーナーや中核人材が一定期間会社に残り、引き継ぎに協力することを定める条項です。期間や役割、処遇は交渉で決まります。経営者保証は、会社の借入れに経営者個人が連帯保証している状態のことで、M&Aの際は買い手側への切り替えや解除を交渉するのが一般的です。詳しくは→経営者保証はM&Aで外せるか
以上、30の用語を駆け足でご紹介しました。すべてを覚える必要はありません。大切なのは、提案書や契約書に出てきた言葉を「わからないまま」にしないことです。当社プラチナパートナーズでは、初回のご相談から専門用語をかみ砕いてご説明することを大切にしています。用語の意味ひとつからでも、どうぞお気軽に無料相談をご利用ください。